刑事コロンボS7E4「攻撃命令(How to Dial a Murder)」は犬を凶器として利用するという遠隔トリックや、犯人との緊迫した心理戦が見どころのエピソードです。本編は1978年に制作された第7シーズンの第4話で、旧シリーズでは最後から2番目に位置する作品です。監督はジェームズ・フローリー、音楽はパトリック・ウィリアムズが担当しています。
あらすじ(ネタバレ注意)
心理学者のエリック・メイスン(ニコール・ウィリアムソン)は死んだ妻と不倫をしていた助手の殺害を計画。電話と『バラのつぼみ』という合図を使って愛犬に助手を襲わせ、事故死を偽装した遠隔殺人を成し遂げます。コロンボは外れていた電話の受話器から、助手が死ぬ直前に電話をしていたと推理し、事故死に疑問を抱きます。そして、捜査の結果、動機や『バラのつぼみ』という言葉を使った犯行の手口を明らかにし、エリックを逮捕します。
犯人のエリック・メイスンは心理学者です。心理学の研究所の所長でもあります。半年前に妻が原因不明の事故で亡くなっています。妻の事故死は、エリックの犯行と考えられますが、立証はされません。被害者はエリックの助手です。この助手は、エリックの妻と不倫をしていました。エリックは不倫に陥った妻とその相手の助手を殺しています。
コロンボは電話の受話器が外れていたことから、誰かが電話をかけてきたことを突き止めます。その人物は助手が犬に襲われたのを知り得たのに、通報はしませんでした。この事実を根拠にコロンボは捜査を進め、様々な証拠を掴みます。さらに、コロンボは、声に反応してスイッチがオンになるレコーダーを使い『バラのつぼみ』という攻撃命令を突き止めます。犬を使った犯行の手口を明らかにしたコロンボはキッチンのわら、助手の消えた上着、不倫関係を示す写真などを犯人のエリックに突き付け、そして、挑発します。挑発にのったエリックは『バラのつぼみ』と叫び、そばにいた愛犬をコロンボにけしかけますが、コロンボに再訓練された犬はコロンボを襲いませんでした。コロンボにのせられて、手口を再現したエリックは、コロンボに感服します。
登場人物とキャスト
- エリック・メイスン(ニコール・ウィリアムソン):心理学者であり、映画の小道具やメモラビリアを集める熱烈なコレクター。妻と不倫関係にあった助手を憎み、愛犬を使った緻密な殺人を実行します。
- チャールズ・ハンター(ジョエル・ファビアニ):メイスンの助手で今回の被害者。メイスンの妻と密かに愛人関係を結んでおり、その復讐の標的とされました。
- ジョアンナ・ニコルズ(キム・キャトラル):メイスン邸のゲストハウスに滞在している若い心理学受講生。被害者の悲鳴を聞いて警察へ通報しました。
- コーコラン(トリシア・オニール):警察の犬訓練士(ドッグトレーナー)。コロンボに犬の習性や条件付けについての助言を行い、事件解決に協力します。
- ステイン巡査(エド・ベグリー・Jr):警察署の犬管理ユニットに勤務している若い警察官。
- ドッグ(本人):コロンボの愛犬であるバセットハウンド。番犬としての能力があるか試される場面で登場します。
トリック解説
犯人は電話のベル、愛犬、犬への変わった合図を使い、被害者が突然犬に襲われて亡くなったようにみせます。
事故死偽装
突如凶暴化した犬の犯行にみせます。
犬の訓練
犯人のエリックは、愛犬が、電話のベルに反応して近づいてくるように訓練します。さらに、『バラのつぼみ』という合図で助手を襲うように仕込みます。訓練に助手の上着を着せたワラ人形を使い、犬が確実に助手を襲うようにします。
助手を誘う口実
エリックは助手をテニスに誘い自宅に招きます。自身は定期健診に向かい、アリバイを作ります。
電話
犯行現場は犯人の自宅のキッチンです。邸宅には電話が二つあったため、助手がキッチンの電話をとるよう、もう一つの電話は電源を抜いておきます。
攻撃命令
犯人のエリックは自宅に電話をかけ、電話に出た助手に、映画『市民ケーン』で主人公ケーンの雪ぞりに何と書いてあった尋ねます。この答えが『バラのつぼみ』です。
犬の処分
人を襲った犬は処分されるはずです。犬がいなくなれば、犯行は立証できなくなります。
動機の隠蔽
助手殺害後、犯人は妻と助手のツーショット写真を助手の自宅から盗みます。
犯人のミス
コロンボが犯人の偽装工作を疑うきっかけや犯人を追い詰める証拠です。
犯行の証拠
エリックによる犯行を裏付ける証拠です。
外れた受話器のブザー音
現場の壁掛け電話の受話器が外れており、受話口からは、電話が外からかかってきた時に流れるブザー音が鳴っていました。このことから、誰かが電話をかけてきたということが明らかになります。
消えた上着
捜査の結果、被害者の上着が消えていることが明らかになります。
キッチンのフックとわら
現場となったキッチンの天井に使途不明のフックがあります。さらにキッチンにはわらが落ちていました。エリックはわらに関して、以前飲んだワインの梱包材であると言い訳します。
不倫の写真
犯人が助手の自宅から写真を盗む前に、コロンボが写真をみつけていました。これにより、犯人が写真を隠滅しようとしたことが発覚します。
犬の反応
警察で管理されることになった犬が電話のベルに反応し、さらに、『バラのつぼみ』という言葉でうなり始めます。コロンボは、声に反応して録音が始めるレコーダーを仕込んでエリックと会話し、『バラのつぼみ』という合図を手に入れます。
断末魔
被害者は死に際にエリックの名前を呼んでいました。母屋に住んでいた第一発見者がその断末魔を聞いています。
定期健診の結果
犯人のエリックは助手殺害のため自宅に電話をかけた時、定期健診で脈拍をとっていました。記録された脈拍から、ある時にエリックの心臓が早鐘を打っていることが明らかになります。
ちぐはぐな証拠
不自然な証拠や状況です。
電話をかけてきた人物がいるのは確かです。その人物は犬の呻き声や被害者の断末魔を耳にしているはずですが、通報などはしていません。
コロンボの罠
コロンボは犯行を再現させるため、エリックを挑発します。挑発にのった犯人のエリックは『バラのつぼみ』という合図をつかって、近くにいた愛犬にコロンボを襲わせます。
感想と考察
本作のミステリー構造における最大のポイントは、「犯行の手法」そのものよりも「どうやって犯人の殺意と合言葉を立証するか 」という心理戦へのシフトです。構造的に見ると、メイスンの仕掛けたトリックは条件反射の組み合わせであり、一見すると完全犯罪に見えます。しかし、「言葉 で人間を支配・コントロールできる」と信じる心理学者としての慢心こそが、彼の最大の弱点でした。映画ファンである自らの趣味から合い言葉を選んでしまったことや、自分の知性に自信を持つあまりコロンボの愚鈍な振る舞いに隠された企みを見抜けなかったことが失策に繋がっています。また、ミステリーとしてのロジックに目をつぶれば、犯人が最後に出した「攻撃命令」が不発に終わり、犬に舐められるコロンボ と呆然とする犯人というコントラストは、倒叙ものの醍醐味である「自滅の美学」を見事に表現した演出だと言えます。
ちなみに、シャーロック・ホームズ「バスカビル家の犬」、古畑任三郎「古い友人に会う」なども犬が登場するエピソードです。原題は「How to Dial a Murder(殺人ダイアルの回し方)」です。
ドラマの内容を、殺人の計画性、偽装工作、犯人のミス、動機、凶器、トリック、コロンボの罠で簡単にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 殺人の計画性 | あり |
| 偽装工作 | 事故死偽装 |
| ミス | 外れた電話の受話器 |
| 動機 | 不倫の復讐 |
| 凶器 | 犬 |
| トリック | しつけた犬 |
| コロンボの罠 | 攻撃命令の再現 |
口コミ分析
好評な意見としては、犬を凶器にしたユニークなアイデアや、終盤のビリヤード台で証拠を提示していく演出のスタイリッシュさ 、そしてラストの「Kiss not Kill(殺さずにキス)」へ至る爽快な逆転劇を挙げる声が多く見られます。また、映画にまつわる小ネ タの散りばめ方を楽しんだファンも多いようです。一方で批判的な視点としては、犯人であるメイスン博士のキャラクターが非常に冷酷で人間的な魅力に欠ける点や、遠隔で犬に襲 わせるという計画自体のリスクの高さ(もし被害者が生存した場合にすぐ露呈する等)、証拠隠滅の詰めが甘いといった脚本上の雑さを指摘する声も存在します。
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余談
- 映画のパロディとオマージュ:原題の『How to Dial a Murder』は、アルフレッド・ヒッチコック監督の名作 映画『ダイヤルMを廻せ!(Dial M for Murder)』のパロディです。また、劇中に登場するソリや門扉、合い言葉の「ローズバッド」は、オーソン・ウェルズ監督の金字塔『市民ケーン』から引用されています。
- 犬たちの名前:犯行に使われた2匹のドーベルマン「ローレル」と「ハーディ」の名は、アメリカの往年のお笑いコンビ(極楽コンビ)が由来となっています。
- 豪華な出演陣:ゲストハウスに住む受講生ジョアンナを演じたキム・キャトラルは、後に『セックス・アンド ・ザ・シティ』のサマンサ役などで世界的に大ブレイクする女優です。
- 吹き替えの魅力:犯人メイスンの日本語吹き替えを担当したのは、映画『ゴジラ』の芹沢博士役などで知られ る名優・平田昭彦氏。インテリで冷徹な犯人の雰囲気に見事にはまっています。
- 犬とチョコレート:作中でメイスンが留置されている犬にチョコレートを与えようとし、コロンボが制止する シーンがありますが、これは「犬にチョコレートを与えると有害である」という実際の知識に基づいた演出です。



