刑事コロンボ「死者のメッセージ(Try and Catch Me)」のあらすじ、トリック解説、真犯人のネタバレです。推理小説家が犯人です。
あらすじ(ネタバレ注意)
推理小説家のアビゲイル・ミッチェル(ルース・ゴードン)は、唯一の身内である姪を殺したと思しき義理の甥を金庫に閉じ込めて殺害します。閉じ込められてからしばらく息のあった甥は、犯人にばれぬようメッセージを残します。コロンボは被害者が残した決定的な証拠に気付き、アビゲイルを逮捕します。
犯人のアビゲイル・ミッチェルは有名な推理小説家です。4カ月前に亡くなった姪が唯一の身内でした。アビゲイルは姪に全ての遺産を相続するつもりでした。被害者はアビゲイルの姪の夫です。アビゲイルの血のつながりのない甥にあたります。アビゲイルは義理の甥が姪を殺したと判断し、復讐のため甥を殺しました。姪はヨット事故で亡くなりました。夫、つまり、アビゲイルの義理の甥が殺したかどうか定かではありません。
被害者の車のキーが紛失していることを理由に、コロンボは事故死を疑います。この車のキーは紆余曲折をへて犯人が回収します。そして、現場付近で拾った、と嘘をつき、コロンボに渡します。しかし、事件直後、警察が現場付近の写真を撮影していたため、犯人の嘘が発覚します。
金庫には小説の原稿がぶちまけられていました。小説のタイトルは「その夜私は殺された」で、さらに破られた白紙の紙切れもみつかります。紙切れは3つに破られているようですが、そのうち1枚が行方不明でした。被害者はベルトバックルで棚に傷をつけ、↑(矢印)も書いていました。矢印が指し示す場所には電球があり、電球の中に、破られた残りの紙切れがみつかります。紙切れは金庫に散らかっていた原稿のタイトル部分でした。文字の一部は消され、紙切れは「私は殺された。アビゲイル・ミッチェルによって」と書かれていました。
登場人物とキャスト
- コロンボ(ピーター・フォーク):ロサンゼルス市警察殺人課の刑事。よれよれのコートと安葉巻、そして「あと1つだけ」というお馴染みの質問で犯人を油断させる天才です。現場に残された僅かな不調和から事故死 説を疑い、真相を追求します(日本語吹き替え:小池朝雄)。
- アビゲイル・ミッチェル(ルース・ゴードン):類稀な知性を持つ高名な推理小説家。姪フィリスを深く愛するあまり、法律で裁かれなかったエドモンドを自らの完全犯罪計画によって葬り去りました。コロンボともお互いに敬意を払い合う関係を築きます(日本語吹き替え:南美江)。
- ベロニカ・ブライス(マリエット・ハートレイ):アビゲイルに4年間仕える非常に 明敏な秘書。エドモンドの死がアビゲイルの犯行であるといち早く察知し、偶然手に入れた彼の車のキーを交渉材料にしてアビゲイルを大胆に恐喝します(日本語吹き替え:桧よしえ)。
- エドモンド・ガルヴィン(チャールズ・フランク):アビゲイルの姪フィリスの夫。アビゲイルの甘い言葉に騙されて金庫室に呼び出され、窒息死させられます。姪の死に関する彼の本当の罪については、劇中では明確な証拠は提示されず謎に包まれています(日本語吹き替え:松橋登)。
- マーティン・ハモンド(G・D・スプラドリン):アビゲイルの顧問弁護士。アリバイ作りの同行者として利用されますが、事件発生時の状況やエドモンドの車のキーを巡るアビゲイルの行動に対し、密かに不信感を抱いているような素振りを見せます(日本語吹き替え:内藤武敏)。
- アニー(マリー・ジャクソン):アビゲイルの屋敷の家政婦。コロンボが灰を落とした灰皿を清掃した際にエドモンドの車のキーを発見し、悪気なくベロニカへと渡してしまいます。
- インストラクター(マリー・シルバ・アレクサンダー):ベロニカが通うベリーダンス教室の講師。聞き込みに来たコロンボに対し、魅力的な身のこなしで対応しました。
- バーク刑事(ジェローム・グアルディノ):事件現場の捜査などでコロンボの補佐を務める刑事です。
トリック解説
犯人は標的を自宅の金庫に閉じ込め窒息死させます。
事故死偽装
金庫に盗みに入った被害者が誤って閉じ込められたようにみせます。
- 犯人は金庫から叫び声が聞こえるかどうか秘書で試しています。
- 閉じ込められた被害者が明確なメッセージを残さないようにするため、金庫からペンを取り除きます。
- 犯人は金庫の暗証番号を教える、と言って被害者を裏口からこそっり自宅に招き入れます。裏口から入るという被害者の行動は、盗みに入ったようにみえます。
アリバイ
犯人の自宅にいた被害者が帰宅する姿を秘書や目撃者に目撃させ、その直後に外出することでアリバイをつくります。
- 犯人は帰宅させた被害者を裏口から招き入れ、金庫に連れて行き閉じ込めます。時間を計測しながら、急いで犯行を済ませます。
- 犯人と一緒に出掛ける予定の弁護士を足止めし、時間を稼ぎます。弁護士は照明のスイッチを修理することになります。
犯人のミス
コロンボが事故死を疑うきっかけ、そして、犯人を追い詰める証拠です。
ちぐはぐな証拠
説明のつかない不自然な証拠や状況です。
警報スイッチ
死体が見つかった時、金庫の警報装置はスイッチがオンの状態でした。スイッチを入れたまま金庫に入ることはできません。犯人が被害者を閉じ込めた時、スイッチは入れていません。出先で家政婦にスイッチを入れさせたと話しています。
消えた車のキー
被害者の車は裏道に停めてありました。しかし、車のキーは見つかりませんでした。車のキーは犯人のアビゲイルが自宅の灰皿に隠しています。このキーを家政婦が見つけ、秘書に渡します。アビゲイルは、キーの重要性に気付いた秘書によって強請られます。
発見された車のキー
秘書から車のキーを回収したアビゲイルは自宅の敷地内で拾ったと嘘をつきます。拾った場所はスプリンクラーの近くだった、と証言するアビゲイルですが、事件直後、警察がスプリンクラー周辺の写真を撮っていました。
姪の写真
被害者の自宅には、妻であるアビゲイルの姪の写真がありませんでした。仲がよかった、というアビゲイルの証言と食い違う状況です。
犯行の証拠
殺人を裏付ける証拠です。第一発見者が犯人となり証拠を隠滅される事態を避けるため、被害者は手の込んだダイイングメッセージを残していました。
散乱した原稿
金庫には「その夜私は殺された」の原稿がばらまかれていました。
紙切れ
白紙の紙切れが2枚みつかります。破られた形跡がありました。
バックル
被害者はベルトを外し、そのバックルには黒い塗料がついていました。塗料は金庫の中にあった金属の箱のものでした。
金属の箱
金属の箱を並び替えると↑が現れます。
電球
↑の先には照明があり、電球を外すと破れた紙切れがみつかります。
メッセージ
みつかった紙切れをつなげると「その夜私は殺された」の表紙になります。表紙にはタイトルと著者が書かれていました。
タイトルの一部は消され、残った文章は「私は殺された。アビゲイル・ミッチェルによって」となります。
感想
「別れのワイン」に次ぐ、窒息死のエピソードです。古畑任三郎の第一話「死者からの伝言」は、このエピソードのオマージュといえます。
被害者が命を落とす直前に遺す「ダイイングメッセージ」について。一般的にダイイングメッセージは不自然に見えがちですが、本作では「なぜ回りくどい方法を取らざるを得なかったのか」という疑問に対し、コロンボが作中で極めて論理的かつ心理的な説明を行っており、物語の説得力を補強しています。 さらに、アビゲイルが犯した決定的な失敗である「車のキーの隠蔽」について考察してみましょう。彼女は弁護士に見つかるのを防ぐため、咄嗟に灰皿の砂にキーを埋めてしまいました。プロの推理作家でありながら、実際の凶行に及んだ際の動揺と焦りから、生身の人間として不自然な隠し方をしてしまった点は、完全犯罪の計画に生じる現実の歪みを実に見事に表現しています。また、エドモンドが本当に妻フィリスを殺害したのかという点について、劇中では確たる証拠は一切示されません。しかし、フィリスの遺影を見つめたエドモンドが見せる不敵な薄笑いや、彼の自宅に妻の写真が1枚も飾られていなかったというコロンボの発見は、 冷めきった夫婦関係を示唆しています。このあえて被害者の罪を決定づけない不透明な演出が、アビゲイルの抱く狂信的な復讐心と、それによって引き起こされた悲劇の重みを一層引き立てています。
原題は「Try and Catch Me」(つかまえてごらん)です。「死者のメッセージ」は原題とは異なったタイトルです。ドラマの内容を、殺人の計画性、偽装工作、犯人のミス、動機、凶器、トリック、コロンボの罠で簡単にまとめます。犯人は被害者を金庫に閉じ込め窒息死させます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 殺人の計画性 | あり |
| 偽装工作 | 事故死を偽装 |
| ミス | 車のキー |
| 動機 | 死んだ姪の復讐 |
| 凶器 | 金庫 |
| トリック | ― |
| コロンボの罠 | ― |
口コミ分析
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余談
- アビゲイル役を演じたルース・ゴードンは、本作の撮影時点で81歳であり、シリーズにおける「犯人役ゲストスターの史上最 高齢記録」を保持しています。
- 日本を代表する劇作家・三谷幸喜は、コロンボシリーズ、特に本作を絶賛しており、彼が脚本を務めた伝説的刑事ドラマ『古畑任三郎』の記念すべき第1話「死者からの伝言」は、本作の「密閉された金庫室に閉じ込めて窒息死させる」という殺害方法やダイイン グメッセージの構造を色濃く受け継いだ完璧なオマージュ作品となっています。
- 劇中に登場するアビゲイル・ミッチェルの美しい海辺の邸宅は、パサデナのラ・ロマ・ロード(880 La Loma Rd)に実在する大豪邸です。このロケーションは、後に大ヒット映画『ラ・ラ・ランド』や『フォーエバー・フレンズ』といった多くのハリウッド映画のロケ地としても使用された、非常に有名な場所です。



